日本でもスタートアップの投資額が年間3000億円を超え、同時に大手からベンチャーへの人材移動も活発になってきています。最近では社員採用だけでなくインターン採用を行うベンチャーも増えており、大企業で働く前にまずはベンチャーで腕慣らし、という学生も多いのではないでしょうか。僕自身もベンチャーでのインターン経験からリクルートへ入社したのちベンチャーへの転職とインターンと社員の両方の雇用形態でベンチャーを経験しています。大企業とベンチャーでは働く人のスタンスが大きく異なり、入社後すぐに受けたベンチャーの洗礼を今でも深く覚えています。
今回はそんなベンチャーで働くにおいて、理解すべきスタンスや必要なスキルをまとめました。大企業からベンチャーに転職したい、またはベンチャーでインターンしようか迷っているという方は是非参考にしてみてくださいね。
ベンチャーの定義とは?大企業と慣習が異なる境目の人数は?
実体験:18人のどベンチャーに入社→100人に成長
僕は新卒でリクルートに入社しました。リクルートは今では上場し数万人の企業になっています。その後、リクルートを退職したのち、今は東証マザーズに上場しているOTA(オンライントラベルエージェント)に入社しました。面接した前日にちょうど上場承認を受けたばかりで、入社時には上場してまだ間もないといった段階でした。上場企業ではあるものの、社員は18人とどベンチャーの組織。さらに新規事業への配属されたものの、上司も部下も誰もいない自分だけのチーム。会社はみんないい人で、社内のことは何でも丁寧に教えてもらえたものの、仕事は自分で進めてねと、どベンチャーの洗礼を受けたのを覚えています。
結論:ベンチャーは創業15年以内・20人以下の組織と定義
入社してからの3年間の在籍期間で社員数は18人から100人まで急拡大しました。退職する前の自分のチームはバイトも入れると20人ほどの組織になっていました。この時には、初めはなかったマニュアルが効率化され、入社後にやることも段々フロー化されていき、目標も明確化されていきました。
ベンチャーという働き方を定義する上で、100人という規模感がちょうど組織としての転換点だった気がします。20人の時は職種ごとに垣根がなく、数十人規模になると職種ごとにデザイン、エンジニア、営業などそれぞれにチームが出来上がってきて、さらに100人近くになるとサービスごとに独立した組織になっていきました。
サービスごとに独立してくると、自分だけでは処理できない業務量になってくるので、段々と属人的だったやり方が汎用的になっていくイメージです。また会社全体の共通事項も同様にそれぞれの型が出来上がってきます。
今回のベンチャーを定義するのであれば、この型がない20人以下の組織と定義することにします。
創業15年以内というのは、僕がいたベンチャーが創業15年以内だったからで、あまり深い意味はありません。
ベンチャーに転職する前に認識しておきたいこと
大手で得た実績とプライドは何の役にも立たない
大手では何千万・何億円のプロジェクトを動かしていたり、大きな組織をマネジメントした実績など、大手で華々しい活躍をされ満を持してベンチャーに転職される方も沢山いるでしょう。しかし、大手での実績がベンチャーでの成功を確約するものではありません。積み上げてきた実績は自分のメンタルを支える自信として持っておくのはとても大切なことです。ただ、自信が過信になりこれまでの大手でのやり方に頼りすぎ、上手くいかないことも多々発生します。ベンチャーではこれまでの実績は心の奥にしまっておき、新しくゼロから学び、挑戦する気持ちと、わからないことは謙虚に学ぶ姿勢が大切です。
誰かに評価されたい意識を捨てる
大手では評価制度がしっかり整っており、給与や表彰式で評価を受けることができます。また社内でやることも決まっており個人によってミッションが決まっているので、社内での競争も活発です。また必ず上司が付き、しっかりと褒めたりおだてたりするフォローアップがあります。社内での目標が給与・表彰・ミッションという点で明確で、上司からのフォローアップもあるので、自分の承認欲を満たすことができます。
一方でベンチャーでは個人のミッションはバラバラ、昇給制度も整っていない、表彰などない、ということがザラです。また上司は自分のことで精一杯なのでフォローアップもないのが基本です。その為、社内の誰かに自分が認められる、ということは難しいと思います。
仕事をする上で承認されることはすごく大事なこと。ベンチャーでは社内に目を向けるのではなく、外に目を向けると最適です。お客様やユーザーなど自分が関わった商品を使ってくれている人に目を向けることで、自分も少しは認められモチベーションになるのではないでしょうか。
ベンチャーに転職するにあたって必要なスキル・スタンス
最後は自分でなんとかするという当事者意識
ベンチャーでは常にリソース不足の為、丁寧に教えてくれる誰かがいないことが多々あります。落ちている情報を拾い、自分の血肉にしていく必要があります。また、大手企業だと「誰かがやってくれる」「誰かが考えてくれる」と思うこともベンチャーでは誰もやってくれません。会議の議事録から事業組織における舵取りまで、全て自分で行う気概が必要です。ベンチャーでは「最後は自分が全てやるんだ」という意識を持つことが大事です。
仕事を待つのではなく自分で作る
僕がベンチャーに入社して初日にパソコンを渡された際に言われたのが、「これで何か作って」です。新規事業という職種柄でもあるのですが、僕がやる仕事は一切決まっておらず、自分で作る必要がありました。その時は無我夢中で仕事を作り、逆に作りすぎて忙しすぎる状態になりましたが・・・ベンチャーでは、一々毎回上司からこれやってあれやってと仕事を振ってくれるわけではないのです。仕事を待っていると一向に何もできません。
まずは自分から周りの人に手伝えることがないか聞きに行くことが大切です。もしないと言われても、ベンチャーでは誰も手が回っていない、やるべきことがたくさんあります。既存業務の効率化やマニュアル化、新規開拓営業など。「誰かやってもらえると助かるけど手がついていない」という仕事からまずは探すのがおすすめです。
できないではなくどうすればできるかという思考
大手企業でやっていたことと全く違う業務を始めたり、急に違う仕事やミッションを与えられることがベンチャーでは多々あります。その際に大事なことは、どうすればできるかという考え方です。僕が2社目に入社したベンチャーの新規事業では、参入を検討する事業に対し、社長が放った一言は「それはどうやったらできるの?必要なものは何?早くやろうよ」でした。とにかく迷って立ち止まる前にやり方を考えて早く検証しよう、ということです。
新しい事はその場で調べて学ぶ
ベンチャーに入ると、入社時に言われていたことと実際にやることと違っていた、ということも頻繁に起こり得ます。特にビジネス職(営業や企画など)は、会社の方針により優先順位が変わることが多々あります。自分が関わったことがなかったりやったことがない仕事でも、その場で自分で理解し解決する能力が求められます。社内でも誰もわからず教えてくれる人がいない仕事もたくさんあります。その為、都度自分で調べて知識を習得し、課題を解決していく必要があります。
例えば、経理や人事などのバックオフィスの職種だと、仕事自体に大きなギャップはないかもしれませんが、新しいツールの導入や効率化による業務フローの改善などは頻繁に行われます。10人以下のベンチャーだとエクセルのフォーマット自体作られていない、ということもザラです。その都度、自分で調べて最適なテンプレートを作ったり、周りと相談しながら進める必要があります。
大企業からベンチャーへの転職は何事も真摯に受け止めるスタンスで
大企業からベンチャーに転職すると、これまでの慣習と異なることやスピード感に戸惑うこともあるかもしれません。ベンチャーでは朝令暮改どころか、朝礼朝会が当たり前です。初めは面食らうかもしれませんが、まずは今までの自分のやり方が全てではないと自分を否定することがスタートです。これまで培ってきたスキルをベースに謙虚なスタンスで取り組めばベンチャーでもうまく仕事を進められる可能性が高まるでしょう。